◎Live Review
Cowboy Junkies
◎Recommended Albums
Chris Thile『Bach: Sonatas and Partitas, Vol.1』, Kyle Shepherd『Into Darkness』, Joni Mitchell『Hejira』, David Bowie『★』,
Willie Nelson『Summertime』, 浜田真理子『Town Girl Blue』,
Allen Toussaint『American Tunes』, Toumani Diabate『Kaira』
◎Coming Soon
Tigran Hamasyan
構成◎山本 昇
今回も少し、最近観たライヴのお話をしたいと思います。今年1月、カウボイ・ジャンキーズが28年ぶりの来日公演を東京と大阪の「ビルボードライブ」で行いました。僕は21日の「ビルボードライブ東京」でのステージを観ました。1985年に活動を開始したカウボイ・ジャンキーズはカナダの出身で、派手さのないルーツ・ロックを、どちらかというとちょっと暗い雰囲気でやってきたグループです。大きく話題になることはあまりないのですが、何かしら聴く人の心に残るものを最初から持っていたバンドなんですね。メンバーはみんなそれなりの歳になりましたが、演奏力は全然衰えていません。ギターのマイケル・ティミンズ、ヴォーカルのマーゴ・ティミンズ、ドラムズのピーター・ティミンズの3人兄弟に、ベイスのアラン・アントンを加えた4人組。今回のライヴでは、もう一人のギタリストのカール・スパタロ、マンドリンとハーモニカとパーカッションのジェフリー・バードを加えた6人編成でした。
特に難しいことをやっているわけではないのに、非常に音楽的にいいものになっている。今回のライヴも、とても満足感の高いものでしたが、なぜそうだったのかを言葉で説明するのはなかなか難しいですね。ただ、一つの要素として、マーゴの歌の説得力というのはあると思います。女性としての魅力を発揮しようとするわけでもなく、あくまでも歌手としてその歌を淡々と聴かせます。ステージでも、初めは特におしゃべりもしません。客席がノッてくると、少しずつ曲の紹介もするようになるのですが、淡々とした感じはやはりそのままです。
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「Sweet Jane」もカヴァーしている彼らですが、音楽的なルーツは、一言で言えばアメリカーナ的なものということになるでしょう。でも、大本にはブラック・ミュージックの影響もあると思います。大ヒット曲があるわけでもなく、ライヴはどこも小さな会場で行っている彼らですが、先日のライヴでマーゴは最後に「あなたたちのように、会場に足を運んでくれる人がいる限り、私たちは演奏し続けることができます」と言って感謝の気持ちを伝えていました。音楽業界では格差が広がるばかりですけれど、こういうバンドがいまも活動できていることには、どこかほっとしますね。いま聴いているのはアルバム『The Trinity Session』(1988年)からの「I Don't Get It」ですが、演奏もしっかりしていて、いかにもカウボイ・ジャンキーズらしい音ですね。この淡々とした雰囲気こそ、彼らのすべてなのかもしれません。さて、次は何年後にお目にかかれるでしょうか。